脳卒中後の肩関節痛とは?原因と対応策を解説

なぜ脳卒中後肩は痛くなるのか?[2]
脳卒中後に肩が痛くなる要因はさまざまあります。その中でも多く見られるものを以下に紹介して行きます。
1)肩関節の亜脱臼
脳卒中発症直後は麻痺側の筋肉が弛緩し、麻痺した腕を支えられない状況が起きます。この時腕の重みによって上腕骨が引き下げられることで亜脱臼が起こりやすくなります。亜脱臼は肩関節周囲の組織(関節包、靭帯、腱板など)にストレスを与えることで痛みを引き起こします。特に棘上筋や上腕二頭筋長頭腱は損傷を受けやすい部位となっています。
(※亜脱臼があると必ずしも痛みが起きるわけではありません)
2)痙縮や拘縮
脳卒中後、時間の経過とともに痙縮が起きる場合があります。痙縮(筋肉の緊張が異常に亢進した状態)や長期間関節を動かしていない状態による拘縮ができると、肩関節の動きを制限することで痛みを引き起こすことがあります。特に肩まわり筋肉の痙縮は肩関節を内旋させ(上腕骨を内側へ引き込む)、肩峰下インピンジメントという肩甲骨と上腕骨の間で筋肉が挟み込まれる現象を引き起こす可能性があります。
3)肩腱板断裂
肩関節は回旋筋腱板という4つの筋肉の腱で関節を安定させています。上記の亜脱臼や痙縮、無理な動かし方をすることで腱板に負担をかけ、断裂を引き起こす可能性があります。断裂が起きると痛みだけではなく、肩関節の機能自体も大きく低下してしまいます。
4)反射性交感神経性ジストロフィー(慢性複合性局所疼痛症候群:CRPS)
この反射性交感神経性ジストロフィーは交感神経の異常な反射亢進により起こります。主な症状は疼痛(灼けつくような激しい痛み)、膨張(腫脹)、関節拘縮、発赤などです。原因ははっきりとは分かっていませんが、亜脱臼などの損傷をきっかけに起こる場合があります。(損傷により交感神経の反射や血管の収縮が起き、それがもとに戻らなくなる。)
対応策[3]
1)ポジショニング
肩に亜脱臼がある場合、浮腫や腫脹が強い場合、腕を下垂することで肩が痛む場合以下の物品を使用することで痛みを予防しましょう。
①三角巾
筋肉の弛緩が強い場合は三角巾を使用し上肢を包み込むように支えることで、しっかりと上腕骨を肩甲骨にはめ込むことができます。着脱には介助者が必要です。
②アームスリング
目的は①同じですが、アームスリングは練習することで、自身で着脱が行えるようになります。最近では、下記のようにおしゃれなアームスリングも販売されています。
③上肢懸垂用肩装具(オモニューレクサ)
目的は①と②と同じですが、この装具は肘を伸ばした状態にしておけるため、肘関節が曲がった状態で固くなるのを防ぐことができます。装着は自身で可能ですが、②よりも難しくなります。
④クッション
椅子などに座っているときは、腕が下がったり、痛める方向へ動かないためにクッションやタオルを手の下に置きましょう。
夜間就寝時など、体を横にすると肩は体の後方へ引かれた状態になり、痛みを増長させる恐れがあります。クッションやタオルを腕の下に置きましょう。
※肘までしっかりとクッションに乗せましょう。
※腕全体をクッションやタオルに乗せましょう。
2)外転・外旋運動
亜脱臼により肩の安定性が損なわれている方、痙縮により肩の内転や内旋が強く起きている方などが対象です。痛みが増悪しない範囲で行いましょう。(下の写真は外旋運動の例)
※脇は開かないように気をつけましょう。タオルなどを手の下に置きテーブルの上を滑らせるように動かします。
3)電気刺激療法(FES)
上腕骨を引き上げる筋肉に使用することで亜脱臼の治療と予防療法に有効です。
4)薬物療法・神経ブロック
痙縮が強い場合にはボツリヌス治療、炎症がある場合にはステロイド注射、痛みに対して鎮痛剤やブロック注射を用いることで痛みの緩和を図ります。
まとめ
脳卒中後の肩の痛みに悩んでいませんか?適切なリハビリやサポートを受けることで、痛みを軽減し、日常生活をより快適にすることが可能です。AViCでは、専門家があなたに合ったリハビリ方法を提案します。肩の痛みの原因や対策について詳しく知りたい方、個別のご相談をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
出典
1)Langhorne P, Stott DJ, Robertson L, et al. Medical complications after stroke: a multicenter study. Stroke 2000;31:1223–9.
2)Turner-Stokes, Lynne, and Diana Jackson. “Shoulder pain after stroke: a review of the evidence base to inform the development of an integrated care pathway.” Clinical rehabilitation vol. 16,3 (2002): 276-98.
3)Turner-Stokes, Lynne, and Diana Jackson. “Shoulder pain after stroke: a review of the evidence base to inform the development of an integrated care pathway.” Clinical rehabilitation vol. 16,3 (2002): 276-98.
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