高齢者が知っておくべき『転倒リスク』とその対策
転倒リスクの要因
筋力低下
高齢になると筋力が衰え、特に下肢の筋力が低下します。
一般的に筋力は20-30最大をピークとして以後減少し、50歳台から低下の割合が高くなっていきます。ある研究では、高齢女性における股関節を開く筋力(外転筋力)が著名に低下していたという報告がされています。加齢に伴う股関節周囲筋力の低下は立っている状態の作業や歩きでの側方への不安定さを招き、生活の活動量の減少や転倒の原因となる恐れがあります。
評価方法:5回立ち座りテスト
特殊な機器を使用せずに簡便に実施できるところがポイントです。こちらのテストは、先行研究より下肢筋力やバランス能力、持久力などを反映します。
方法:立ち座り動作をできるだけ素早く5回反復します。その際の所要時間を測定します
対策
筋力を維持・向上させる運動を取り入れることが重要です。例えば、軽いスクワットや足を持ち上げる運動を毎日行うことで、筋力を維持できます。
バランス機能低下
①姿勢コントロールの特徴
若年成人と比べて高齢者は特徴的な姿勢保持の戦略をとります。足関節を中心とした運動で重心を制御し反応する足関節戦略よりも股関節の運動で反応をする股関節戦略を用いる傾向にあるといわれています。足関節戦略は主として足関節周囲の筋力を発揮させて足部を固定することが必要で、股関節戦略よりもバランス反応に筋力を必要とする複雑な反応です。加齢による筋力低下や平衡感覚の低下等が影響し、あまり筋力を必要としない反応である、股関節の動きを中心とした姿勢制御を行うようになると考えられます。
②動的バランス能力の低下
止まった姿勢で姿勢を保持する能力よりも、意図して重心を移動したり、ステップするような動的バランス機能の方が加齢による機能低下が目立ちます。
評価方法:ファンクショナルリーチテスト
方法
1)開脚立位で利き手側の上肢を肩関節90度屈曲
2)上肢をそのまま水平に最大限前方に伸ばすことができる距離を測る
対策
バランス感覚を鍛える運動(例:片足立ちや足踏み)が効果的です。専門家(理学療法士や作業療法士等)の指導のもとで、実践的なバランストレーニングを行うことも推奨されます。
視力の低下
視力の低下により、足元の障害物に気づかないことがあります。
例:黄斑変性、白内障、緑内障など
対策
定期的に視力検査を受け、眼鏡やコンタクトレンズの度数を適切に調整することが大切です。また、家の中の照明を明るく保ち、特に廊下や階段の照明を強化しましょう。
薬の副作用
一部の薬は、めまいやふらつきを引き起こすことがあります。
代表的な薬物
- 抗コリン薬
- 抗うつ薬
- 抗精神薬、睡眠薬
- 降圧剤 など
また、4種類以上の薬剤の複数使用も転倒リスク増加に関連するとも言われています。
対策
服用している薬が転倒リスクを高める可能性がある場合、医師に相談して薬の調整を検討することが大切です。また、薬の影響でふらつきがある場合は、座って休む習慣を身につけましょう。
自宅内の環境
自宅内の段差や滑りやすい床、散らかった物が転倒の原因となります。
対策
家の中を整理整頓し、歩行を邪魔する物を置かないようにしましょう。特にカーペットやコードが転倒の原因となることがあるため、それらを固定したり取り除いたりすることが重要です。浴室や玄関には手すりを設置し、滑りにくい床材を使用することも効果的です。
転倒を防ぐための日常的な工夫
適切な履物を選ぶ
滑りにくい靴や、足にしっかりフィットする履物を選ぶことは、転倒予防に非常に重要です。
歩行補助具の活用
バランスが取りにくい場合、杖や歩行器などの補助具を使用することで、安定感を高めることができます。適切な補助具を選ぶために、理学療法士や専門家の助言を受けましょう。
定期的な体力チェック
筋力やバランス能力を定期的にチェックすることは、転倒リスクの早期発見につながります。地域の健康相談や理学療法士による評価を受けることが有効です。
まとめ
高齢者にとって転倒は避けたい事故ですが、日常生活におけるちょっとした工夫や運動習慣を取り入れることで、リスクを大幅に軽減することができます。家族や介護者も一緒に取り組むことで、安心して生活を送ることができる環境を作っていきましょう。
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