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脳梗塞の後遺症は治る?知っておくべき知識とリハビリのポイント

脳梗塞は脳の血流が途絶えることで脳細胞がダメージを受ける病気です。その結果、さまざまな後遺症が発生することがあります。代表的な後遺症には、運動麻痺、感覚障害、痙縮、失語症、注意・記憶障害などがあります。
今回はそのような後遺症でお悩みの脳卒中当事者様やご家族に向けて、特に運動機能に焦点をあてて後遺症を改善していくためのポイントを理学療法士の視点で解説します。

脳梗塞後遺症の回復過程

脳梗塞の経過は以下の段階に分けて考えられることが多いです。


・急性期:発症~2週間


・亜急性期(回復期):2週間~6か月


・慢性期(生活期):6か月以降~


 


このような時期にわける理由は脳梗塞後遺症の回復過程は時間に依存するという知見に基づいています。


最も顕著な改善は急性期の発症後数週間に見られ、3か月後には比較的安定し、6ヶ月後には自然回復の限界に達し慢性的な障害に陥ります。


しかし、近年ではリハビリを行うことで慢性期でも脳梗塞の後遺症は改善するという多くの報告があります。


ここでは2020年に報告された脳梗塞412名のデータから回復過程をモデル化した研究結果を示します[1]。


そのグラフから下記のようなことが読み取れます。


・回復過程によって5つのグループにわけることができる


・全体として急性期は改善度合いが大きく、時間経過とともになだらかになる


・発症時に重度運動麻痺であったグループ1,2,3はその後の回復度に大きな違いがある。


・グループ2,3は慢性期以降も改善を認めている。



Rick van der VlietらPredicting Upper Limb Motor Impairment Recovery after Stroke: A Mixture Model. Ann Neurol. 2020より引用改変


 


発症後まもない時期は改善度合いが大きいですが、発症後6か月以降の慢性期でもよくなる人も存在しています。


脳梗塞の後遺症が治るか?という問いに対する回答としては個人差があり、回復の期間や段階もさまざまということが言えます。このような個人差の要因やどのようなケースで大きな改善が図れるのかについては今後のさらなる研究が必要です。


 



後遺症改善と脳機能の関係性

脳梗塞後遺症の改善を考える上で神経可塑性と呼ばれる脳機能の変化が重要です。ここでは簡単に神経可塑性について解説します。


 


神経可塑性


脳梗塞により脳への血流が遮断されることで血管周囲の脳の神経細胞が壊死してしまいます。いったん死んでしまった神経細胞は再生が困難であり、その部位は担っていた機能が失われて様々な後遺症として現れてきます。しかし、生き残っている他の神経細胞が死んでしまった神経細胞の代わりに機能を補うようになることが知られています。そのように柔軟に脳機能が変化することを「神経可塑性」と呼びます。後遺症改善には神経可塑性をいかにして誘導するかが重要です。


 



後遺症改善のためのリハビリのポイント

次に神経可塑性を誘導し、後遺症を改善していくためのリハビリのポイントについて解説します。


 


➀早期からリハビリを開始すること


発症後早期は脳が変化しやすい時期です。そのため早期からリハビリを開始することが重要です。


脳梗塞後に死んでしまった神経細胞の周囲もいったん活動停止状態に陥りますが、適切に脳の循環状態が改善することで徐々に活動を再開していきます(脳の可逆性)。


また、早期リハビリは不活動に伴う二次的な筋力・体力低下(廃用症候群)を予防するという観点においても重要です。


 


➁十分な量のリハビリを行うこと


高頻度に反復練習を行うことで神経回路の働きを強化することができ、後遺症改善に役立ちます。逆に麻痺側の身体を使わないことで脳は使い方を忘れてしまい、さらなる機能低下を引き起こすことが知られています(学習性の不使用)。


リハビリの量を増やすことは脳卒中治療ガイドラインにおいても推奨されており(推奨度A、エビデンスレベル高)、脳梗塞後遺症の改善に効果的とされています[2]。


 


➂適切な課題難易度のリハビリを行うこと


十分な量のリハビリを行うことが重要と述べましたが、ただ繰り返し行えばよいというものではありません。その際にどのような難易度で反復練習をするかが重要です。


簡単に行えてしまう課題や受動的なリハビリ(セラピストに身体を動かしてもらうだけで本人の能動的な努力を要さない)は脳への刺激が少なく、後遺症改善には効果的ではないとされています。


また、かえって難しすぎる課題ばかりを行ってしまうと、うまくいかないことによるストレスやモチベーション低下などを引き起こし、効果的なリハビリにはなりません。


難しすぎず、簡単すぎない難易度でリハビリを行う必要がありますが、目安としては「少し大変だけどなんとかできる」くらいに感じる難易度がよいと思います。



まとめ

いかがだったでしょうか?


脳梗塞の後遺症を改善したいというご希望をお持ちの方は多くいらっしゃると思います。


個人差も多く、一概には言えませんが継続的にリハビリを行うことで後遺症の改善が期待できます。


早期からリハビリを開始し、適切な難易度のリハビリを十分な量行うことが脳機能の再編成を促し、後遺症改善に役立ちます。


リハビリ内容でお悩みの方は近くのリハビリ専門家に確認をしながら進めていくことをおすすめします。


 



出典


  1. Rick van der Vliet et al,Predicting Upper Limb Motor Impairment Recovery after Stroke: A Mixture Model. Ann Neurol. 2020

  2. 日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2021、株式会社協和企画、2021.


 


守屋耕平
執筆者

守屋耕平

理学療法士、認定理学療法士(脳卒中)、認知神経リハビリテーション士
回復期リハビリ病院で10年以上、脳卒中・脊髄損傷・骨折患者を中心にリハビリテーション医療に従事。認知神経リハビリの専門家。研究活動を行いながら、科学的根拠に基づくリハビリに加え、対象者自身が感じている身体の状態や感覚などの主観的側面を活かしたリハビリを実践。認知神経リハビリの研修会講師としても活躍。

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