ボツリヌス療法とリハビリの効果 ~痙縮治療の組み合わせによる効果の最大化~
1.ボツリヌス療法とは?
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射し、筋肉の緊張を和らげる治療法です。
ボツリヌス毒素と聞くと、不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、菌そのものを使用するのではなく、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質を使用するため菌に感染する恐れはありません。
美容分野においても用いられることも多く、顔の筋肉の緊張を和らげることでしわをなくす目的などで使用されます。一般的には「ボトックス」という名称でご存知の方もいらっしゃるかと思います。
同様に筋肉の緊張を和らげる目的で脳梗塞や脳出血後の後遺症である上肢・下肢(手足)の痙縮(つっぱり)に対してもボツリヌス毒素を用いた治療が行われます。
2.ボツリヌス療法の対象・流れ
◆ボツリヌス療法の対象となる症状
・手のひらに爪が食い込んで痛み
・もう少し手が伸びてほしい
・痛みのためリハビリをしたくない
・着替える時に痛いし、時間がかかってしまう
・かかとがつかなくて変なところにタコができて痛い。
このような症状がみられる方は、ボツリヌス療法の適応となる可能性があります。痙縮は発症後すぐに出現するだけでなく、6ヶ月以上経過した慢性期にも生じることがあります。
手足のつっぱりが強くなり、動かしにくくなってきた場合、医師やリハビリの専門家への相談が推奨されます。一方で、発症後から手足を動かすことをあまりせず、筋肉そのものや関節が硬くなってしまった場合、効果の出にくいとされています。
そのため、ストレッチや運動を日常的に行うことが必要となります。
◆ボツリヌス療法の流れ
①医師の診察
・手足のつっぱり具合や生活での問題点などの確認
・どの筋肉の緊張を和らげる必要があるか検査します。
②ボツリヌス菌を筋肉内に注射します。
③リハビリを行い、筋肉をしっかりと動かす。
上記のような流れで実施されます。
治療は年単位で計画され、複数回での治療が基本です。
実施頻度は3、4か月に1度となります。
1度で終わりの治療ではなく、定期的な投与と継続したリハビリが必要となる治療法です。
3.ボツリヌス療法とリハビリの効果
ボツリヌス療法は、痙縮に対して脳卒中治療ガイドラインで推奨されている治療法です。
上肢・下肢の痙縮に対して
・運動機能(手足の動き)
・歩く速さ
・足首の可動範囲
に対する効果が報告されています。
これらは、訓練を継続した上でのボツリヌス療法の効果となっています。
医師による注射だけではなく、理学療法士や作業療法士などリハビリテーションの専門家と連携したボツリヌス療法による痙縮治療が必要です。
当施設においても医療機関と連携をし、ボツリヌス療法と合わせてリハビリを行っています。
4.リハビリ方法
実際どのようなリハビリが行われるかについて代表的なものを2つ説明していきます。
・電気刺激療法
電気刺激療法は神経や筋肉を刺激して、神経の再生や機能改善を目的とする治療方法で、脳卒中の後遺症に幅広く用いられています。
痙縮に対しても、神経や筋肉を刺激することによって筋肉の緊張を和らげます。
詳しくは以下をご参照ください。脳卒中リハビリにおける”電気刺激療法”とは?
・振動刺激療法
振動刺激には手で持つタイプや全身で乗ることができるタイプがあります。
筋力向上、柔軟性改善、バランス向上、リラクゼーションなどを目的として使用します。
実際のリハビリの中では、痙縮により緊張の高くなった筋肉にストレッチをかけながら、その筋肉に対して振動機器を当てて筋肉の緊張を和らげます。
詳しくは以下をご参照ください。脳卒中リハビリにおける”振動刺激療法”とは
まとめ
ボツリヌス療法の概要やリハビリの効果について説明させていただきました。
ボツリヌス療法はリハビリと組み合わせ治療を行っていくことで効果が期待できます。
注射だけを行っていて、リハビリが行えていない方はぜひリハビリを取り入れていっていただけると相乗効果が得られるかと思います。
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