【意欲が重要】リハビリに前向きに取り組むために必要なこと。
モチベーション(意欲)の正体とは?
モチベーションとは、日本語で「動機づけ」、「意欲」と訳されることが多いです。一般的には「目標を達成しようとする行動を引き起こす動機、誘因」であるとされています。
モチベーションには、「内的動機づけ」と「外的動機づけ」があります。
内的動機づけ[1]
人が何かを行う際に外部からの報酬や認識を期待せずに、その行動自体の楽しさや満足感、達成感を求めて行動する状態を指します。例えば、誰かが新しいスキルを学んだり、趣味に没頭したりする際に、その行動が「自分にとって意味がある」「楽しい」と感じることが、内的動機づけの典型的な例です。
内的動機づけが強い場合、その人は困難に直面しても、その課題を克服しようとする意欲を持ち続けることができます。
例えば、リハビリを通じて再び自分の足で歩けるようになったり、趣味である旅行へ行けるようになったりなど、それが他者からの評価や金銭的報酬を目的とせず、純粋に自分自身の自己実現から来る場合、その過程そのものが深い喜びや満足感をもたらします。
そのため、リハビリテーションにおいても、この内的動機づけがモチベーション(意欲)を維持するのにとても重要となります。
外的動機づけ[1]
個人の行動が外部からの報酬や承認、罰の回避といった外的要因によって駆動される状態を指します。外的動機づけは、一般的には金銭的な報酬、地位の向上、賞賛、賞与、さらには罰や否定的なフィードバックの回避といった具体的な外部刺激に基づいています。例えば、仕事をする理由が給料や昇進のためであったり、学校で良い成績を取るために勉強をするのが親や教師からの評価を得るためであったりする場合、これらは外的動機づけに基づいた行動と言えます。外的動機づけは、特に短期的な目標を達成する際に非常に効果的であることが多いです。一方で、外的動機づけは内的動機づけに比べて持続性が低いとされています。報酬や罰がなくなったり、その効果が薄れたりすると、動機づけ自体が低下する可能性が高いためです。
例えば、リハビリテーションにおいても家族や医療者に評価を委ねており、他者からの賞賛やフィードバックにばかり価値を感じている場合です。
総じて、外的動機づけは、人々が目標に向かって行動するための強力な手段ですが、その適用には慎重さが求められます。外的報酬を適切に管理し、内的動機づけを損なわないようなバランスを保つことで、リハビリテーションに対するモチベーション(意欲)を最大化させます。
モチベーション(意欲)に影響する要因は?
日本の脳卒中患者を対象とした報告を紹介します[2]。脳卒中患者に限らず、リハビリテーションを受けている方であれば、当てはまることが多いと思います。
①患者の目標
患者のモチベーションは、自らが設定したリハビリテーションの目標に強く依存します。例えば、「自宅復帰」や「仕事への復帰」、「家族への負担軽減」といった具体的な目標が、患者たちのモチベーションを大きく高める要因として機能します。これらの目標が具体的であり、かつ達成可能であると感じられる場合、患者はリハビリに対してより積極的に取り組む姿勢を示します。一方で、期待と現実との間に大きなギャップが生じると、モチベーションの低下を招く懸念があります。
②成功と失敗の経験
リハビリの進行中に経験する成功体験が、患者のモチベーションを強化する重要な要因となります。例えば、ある患者は「以前できなかったことができるようになった時、モチベーションが非常に高まる」と述べています。逆に、繰り返される失敗や期待した成果が得られない場合には、患者は落胆し、モチベーションが低下することがあります。特に若年者ほど、回復の停滞や失敗の反復に対して敏感であり、これがモチベーションに負の影響を与えることが懸念されます。
③身体的および認知的機能
身体的な状態や認知機能もまた、モチベーションに直接影響を与える要因となります。例えば、疲労や痛み、認知機能の低下がモチベーションの低下につながることがあります。特に高齢者においては、認知機能がリハビリの目的を理解する能力に関わり、それがモチベーションを維持するための重要な要素となります。
④レジリエンス(困難を乗り越える力)
高いレジリエンスを持つ患者は、自身の障害を受け入れ、リハビリに対して前向きに取り組む姿勢を維持しやすいです。
⑤リハビリ専門家の影響
リハビリ専門家との関係が、患者のモチベーションにおいて極めて重要な役割を果たします。例えば、リハビリ専門家からのフィードバックや主治医からの励ましが、患者のやる気を引き出す一方で、逆にネガティブなフィードバックや不適切なコミュニケーションがモチベーションの低下を招く可能性があります。また、リハビリの内容が適切であり、患者に合った目標設定が共有されると、モチベーションが維持されやすいです。
⑥患者間の関係
他の患者の努力を観察することが、モチベーションの向上に寄与することがあります。特に、同じ施設で他の患者がリハビリに取り組む姿を目にすることで、互いに刺激を受け、自己のリハビリに対する意欲が高まることがありました。ただし、逆に他者の影響をあまり受けず、他人と自分を比較しない方もいらっしゃいます。
⑦サポーターとの関係
家族や友人、同僚からの支援が、患者のモチベーションに大きな影響を与えます。例えば、家族からの励ましや訪問が、患者のリハビリへの意欲を高める一方で、サポートが欠けていると患者は孤独感を抱き、モチベーションが低下することがあります。
いかがでしょうか?
リハビリテーションにおけるモチベーションは、主に外的要因に依存していることが多いです。特に、リハビリの目標設定や医療専門家との関係が、患者のモチベーション維持において重要な役割を果たしています。また、患者の年齢に応じた違いを理解し、それに基づいた個別の対応が必要です。外的要因の影響が大きいため、適切なモチベーション管理も必要となります。
AViCでの取り組み紹介
私たちAViCでは利用者のモチベーション(意欲)を高め、リハビリ効果を最大化させる取り組みを行なっています。
Shared Decision Making (SDM)を用いたコミュニケーション
SDMとは、リハビリの選択や目標設定において、医療専門職と患者が双方向に情報を共有して、一緒に意思決定をしていくプロセスになります。医療専門職からは医学的な情報や最善のエビデンス(科学的根拠)の情報を提供し、患者からは生活背景や価値観を提供してもらいます。リハビリテーションのような、唯一最善の方法が明確でなく、選択肢も多い場合などに適応されるコミュニケーション手法です。
AViCでは、SDMによるコミュニケーションの研修を通じて、コミュニケーションスキルを磨いています。利用者自らがリハビリの意思決定に参加されることで、リハビリに対するモチベーションを高めてもらうとともに、リハビリ専門家とのコミュニケーションを通じて良好な関係構築を行い、リハビリをスムーズに進めていくことを期待しています。
効果の見える化
AViCでは、リハビリの進捗を可視化するために定期的に評価を実施しています。評価方法も世界的に標準化されている尺度を用いて行い、適切な効果判定を行なっています。
結果もわかりやすくグラフ等で作成し、数値の意味を説明することで、利用者の改善実感を高め、モチベーションの維持向上を図っています。
まとめ
・モチベーション(意欲)には内的動機付けと外的動機付けが存在します。
・リハビリにおけるモチベーションは外的要因が多く、その方にあった目標を設定し成功体験を積み重ねること、リハビリ専門家やサポーターとの関係性が大切です。
・AViCではモチベーション(意欲)を維持向上させるために、SDMによるコミュニケーションや効果の見える化にも力を入れています。
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