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脳梗塞後に再び歩けるようになるために知っておきたい一般的な予後や特徴

脳梗塞後の歩行障害は、多くの方が悩まれている後遺症かと思います。ご病気を発症されて、体が思うように動かない中、「このまま歩けないのかな?」、「いつ歩けるようになるのかな?」と不安が大きくなるかと思います。
一方で、予後を知ることは怖いことだと思います。ただ、『一般的なデータ』として理解いただくことが大事だと思います。リハビリも日々進歩しており、予測を超える改善もあります。皆様のリハビリの一助になれば幸いです。

脳卒中後にどのくらいの人が再び歩けるようになるのか?

歩行能力を示す指標FAC?

一人で歩行ができるかどうかを判定する指標に、FAC(Functional Ambulation Category)というものがあります。


このスコアは、0から5までの6段階で評価され、スコアが高いほど患者の歩行能力が優れていることを示します。


FACスコアの意味


スコア0:歩行困難。患者は歩行中、常に2人の支援者が必要です。歩行中に全く自立できません。


スコア1:患者は歩行中、常に1人の支援者が必要です。歩行中に自立することができません。


スコア2:患者は歩行中、1人の支援者が必要ですが、支援者は患者のバランスを保つために手を添える程度です。部分的に自立して歩行できます。


スコア3:患者は基本的に自立して歩行できますが、支援者が近くで監視し、必要に応じてサポートする必要があります。例えば、階段の上り下りや転倒の危険がある場合などです。


スコア4:患者は屋内で自立して歩行できます。支援者の監視や物理的な支援は必要ありませんが、屋外での歩行には不安が残る場合があります。


スコア5:患者は屋内外問わず、完全に自立して歩行できます。支援や監視が全く不要です。


 


つまり、FACスコア3と4がお一人で歩けるかどうかの境目になり、お一人で歩けるというのはスコア4以上となります。


 



研究報告に沿って解説!

いくつか研究報告を紹介しながら、解説していきます。


 


一つ目は、韓国で実施された脳卒中患者30名(平均年齢55.0±13.7歳)を対象とした研究[1]を紹介します。


脳卒中を発症してから1ヶ月以内(平均13.0±6.6日)にリハビリを開始し、1〜2時間/日、週5日、6ヶ月実施すると6ヶ月後に86.7%の方がFACスコア4以上、つまりお一人で歩けるようになられたようです。


ただし、今回の場合は杖や装具といった歩行を助けるための環境設定をした場合も含まれています。


 


日本では、脳卒中発症後1ヶ月程度は急性期病院に入院し、その後回復期リハビリテーション病院等で1.5〜6ヶ月は集中的なリハビリを受けられる体制となっています。そのため、この研究報告を参考にするとしっかりとリハビリに取り組めれば、6ヶ月後にお一人で歩けるようになる可能性が高いと言えます。


 


二つ目は、アルゼンチンで実際された脳卒中患者185名を対象とした研究[2]を紹介します。


脳卒中を発症してから1ヶ月以内(中央値29日)にリハビリを開始し、50分/回、2回/日、5〜6回/週実施しました。入院期間は約4ヶ月間(中央値87日)でした。退院時に、FAC


スコア4以上、つまりつまりお一人で歩けるようになられた患者は10.8%と報告されています。


 


今回の研究では、より重症な方を対象にしているため、お一人で歩けるようになられた方も少なかったと思われます。


 


多くの研究をまとめると、集中的なリハビリを受けた方で再びお一人で歩行できるようになる確率は、発症後6ヶ月で、約60%とされています[3]。


 


まずは、集中的なリハビリを実施していくことが重要となります。



一人で歩けるようになる方の特徴は?

ご病気になると、「私は歩けるようになるかしら?」と不安が大きくなると思います。まずは、お一人で歩ける可能性を高める特徴について知ってみます。


代表的なものに、Time to Walking Independently after STroke(以下:TWIST)アルゴリズムというものがあります。


TWISTアルゴリズムは、脳卒中後の患者がいつ歩けるようになるかを予測するための簡単な方法です。


この方法は、脳卒中後1週間以内に患者の体幹(胴体)の動きと股関節の筋力をチェックすることで、歩行の回復を予測します。以下に、わかりやすく説明します。


体幹の動きと股関節の筋力


Trunk Control Test(TCT)


何をするの?: 患者は両側に回転したり、座ったり立ち上がったり、足を床につけずに座るなどの動きを行います。


点数の付け方: 各動作に0点から25点のスコアがつけられ、合計で0点から100点になります。動作を正しく行えれば25点、全くできなければ0点です。


Medical Research Council(MRC)


何をするの?: 股関節の筋力を評価します。


点数の付け方:0点から5点のスコアで評価され、数字が大きいほど筋力が強いことを意味します。


 


TWISTアルゴリズムの使い方


・TCTスコアが40点以上の場合


予測:その患者は脳卒中後6週間以内に自分で歩けるようになる可能性が非常に高いです。


 


・TCTスコアが40点未満かつ股関節の筋力が3点以上(重力に勝てる〜正常筋力)の場合


予測: 股関節の筋力が3点以上であれば、その患者は脳卒中後12週間以内に自分で歩けるようになる可能性があります。


 


・TCTスコアが40点未満かつ股関節の筋力が3点未満(重力に勝てない〜力が全く入らない)の場合


予測: 股関節の筋力が3点未満であれば、その患者が自分で歩けるようになるのは難しいと予測されます。



まとめ

いかがでしょうか?


脳卒中後に再びお一人で歩けるようになることは、多くの方の目標かと思います。


注意してほしいこととして、これらの予測は自分以外の他人のデータをまとめて算出されている予測なります。ですので、すべて当てはまることはないです。


また、リハビリも日々進歩していますので、予測を超えて改善させる方も多くいらっしゃいます。


一つの目安として捉えていただき、主治医や担当療法士と相談しながらリハビリプログラムを検討していくと良いと思います。


私たちの施設でも、車椅子でリハビリを開始してお一人で外を歩けるようになった方もいらっしゃいます。諦めずに毎日少しずつ改善に向かって取り組んでいきましょう。


 



出典

 



  1. Lee KB, Kim JS, Hong BY, Sul B, Song S, Sung WJ, et al. Brain lesions affecting gait recovery in stroke patients. Brain Behav. 2017;7: e00868.

  2. Gianella MG, Gath CF, Bonamico L, Olmos LE, Russo MJ. Prediction of Gait without Physical Assistance after Inpatient Rehabilitation in Severe Subacute Stroke Subjects. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2019;28: 104367.

  3. Preston E, Ada L, Dean CM, Stanton R, Waddington G. What is the probability of patients who are nonambulatory after stroke regaining independent walking? A systematic review. Int J Stroke. 2011;6: 531–540.

  4.  Selves C, Stoquart G, Lejeune T. Gait rehabilitation after stroke: review of the evidence of predictors, clinical outcomes and timing for interventions. Acta Neurol Belg. 2020;120: 783–790.


荒井 一樹
執筆者

荒井 一樹

理学療法士
回復期リハビリテーション病院、地域包括ケア病棟で主に脳血管疾患、整形外科疾患、内部疾患の患者様に対するリハビリテーション医療に従事してきました。科学的根拠に基づいたリハビリに加え、在宅生活を見据えた支援を行います。

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