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脳卒中リハビリにおける”ミラーセラピー”とは?

脳卒中後のリハビリ方法のひとつに、ミラーセラピーがあります。
ミラーセラピーには、麻痺側をあたかもご自身で動かしているように錯覚を起こす狙いがあり、これは健常側の動きのミラーリング(反転)を利用して損傷側の脳の興奮を誘発する目的があります。
本記事では脳卒中当事者の方に向けて、主に手の麻痺に対してのミラーセラピーについてご紹介します。

1.脳卒中リハビリにおけるミラーセラピーとは?

ミラーセラピーは、錯覚を用いて脳の再教育を誘導することで手・指の運動機能を回復させるリハビリ手法の一つです。

鏡に映し出された健常側の腕の運動でシンプルな作業を行い、その運動があたかも患部の腕であるかのように見せることで、脳を再教育するというものです。こうすることで、健常な腕の鏡に映る反射した像が脳へのフィードバックとなり、脳は患部の腕が問題なく動いていると錯覚します。


主な適応

ミラーセラピーは主に脳卒中患者に適応となります。幅広い重症度の方に対して検証されており、特に手指の伸展を認めない症例に対する効果なども示されております。

ミラーセラピーは道具さえ揃えることができれば家庭環境にも組み込みやすいことが特徴です。



2.ミラーセラピーのやり方を紹介

“具体的な方法についてです。

準備する物:

①机

②鏡(高さ46cm、幅60cm程度の鏡が用いられることが多い)

③練習用物品

環境:

①患者さんは机の前の椅子に着席し両足を肩幅で床につけた姿勢をとる

②テーブル上に身体の中心の位置に鏡を配置(身体に対して直角の向きで設置)

③鏡を隔て両手を置く(健常な腕の方向に鏡面を設置)

内容:

①上記の環境をセッティング

②患者さんは鏡に映った健常な腕を注視

③健常な腕を注視しながら一連の運動を反復する

運動で実施する動作は、生活の行為に関連した動作を行うのが推奨されています。

例)リーチング、物品把持、タオルたたみ、テーブル拭き、スポンジ絞り、ペグボード、カードめくり、タイピングなど


物品や環境を共有することで、自主トレーニングとして自宅で実施することも可能です。



ミラーセラピーの期待される効果は?

ミラーセラピーは以下のような効果が期待されます。


⑴運動障害等の改善

ある報告では慢性疼痛の有無に関わらず、腕または足に麻痺をお持ちの脳卒中後遺症者を対象にしたミラーセラピーまたは他のリハビリ療法との併用による介入は運動麻痺のスコア(FMA)、道具使用等のパフォーマンス(ARAT)などの指標においてプラセボと併用した標準的介入群と比較して、運動機能を促進する効果が有意に高いことが示されました。

また、運動障害だけでなく感覚、視空間無視、痛みにも効果があることが確認されています。

⑵日常生活動作能力の改善

質の高いシステマティックレビューとして定評のあるコクランレビューでもミラーセラピーの有効性はまとめられており、日常生活動作を改善する可能性があると結論づけられています。本国の2021年発刊された理学療法ガイドラインにも、「上肢を使用するADLの改善にはミラーセラピーを行うよう提案する」と声明が出されています。



まとめ

ミラーセラピーは健常な腕の鏡に映る反射を利用し、患部の腕が問題なく動いているという錯覚を利用するリハビリ手法です。コストも少なく、実際のリハビリはもちろんご自宅のトレーニングにも導入しやすい方法となります。国際的にも効果検証が多くされている方法であり、運動機能、生活動作能力の改善に有効といわれています。リハビリの併用としてぜひ知っておいていただきたい方法となります。



出典


  • Gandhi, Dorcas Bc, Albert Sterba, Himani Khatter, and Jeyaraj D. Pandian. 2020. “Mirror Therapy in Stroke Rehabilitation: Current Perspectives.” Therapeutics and Clinical Risk Management 16 (February): 75–85.

  • Rodrigues, Letícia Cardoso, Nayara Correa Farias, Raquel Pinheiro Gomes, and Stella Maris Michaelsen. 2016. “Feasibility and Effectiveness of Adding Object-Related Bilateral Symmetrical Training to Mirror Therapy in Chronic Stroke: A Randomized Controlled Pilot Study.” Physiotherapy Theory and Practice 32 (2): 83–91.

  • Rodrigues, Letícia Cardoso, Nayara Correa Farias, Raquel Pinheiro Gomes, and Stella Maris Michaelsen. 2016. “Feasibility and Effectiveness of Adding Object-Related Bilateral Symmetrical Training to Mirror Therapy in Chronic Stroke: A Randomized Controlled Pilot Study.” Physiotherapy Theory and Practice 32 (2): 83–91.

  • Yang, Yue, Qingchun Zhao, Yingshi Zhang, Qiong Wu, Xiaowen Jiang, and Gang Cheng. 2018. “Effect of Mirror Therapy on Recovery of Stroke Survivors: A Systematic Review and Network Meta-Analysis.” Neuroscience 390 (October): 318–36.

  • Thieme, Holm, Nadine Morkisch, Jan Mehrholz, Marcus Pohl, Johann Behrens, Bernhard Borgetto, and Christian Dohle. 2018. “Mirror Therapy for Improving Motor Function after Stroke.” Cochrane Database of Systematic Reviews 7 (7): CD008449.

  • 一般社団法人 日本理学療法士協会,理学療法ガイドライン第2版


リハビリ施設AViC
執筆者

リハビリ施設AViC

株式会社豊通オールライフが運営する自費リハビリ施設AViCです。尾山台(東京・世田谷区)・日本橋(東京・中央区)と名古屋栄(愛知県・名古屋市中区)の3店舗を運営をしております。 脳卒中や、パーキンソン病などの神経難病、介護予防、痛みなど幅広いお悩みに対して、リハビリの専門家である理学療法士や作業療法士が専門家の立場から、最新情報をもとに科学的根拠に基づいたリハビリを通しご利用者様の人生を豊かに出来るよう営業を行っています。

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