脳卒中の症状とは?麻痺だけではない後遺症と対策について
脳卒中の症状とは?種類別に解説
脳梗塞の症状
脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで酸素が行き渡らなくなり、脳細胞が死んでしまうことです。脳梗塞は、梗塞の原因となる部位や要素により呼び方が異なります。
血液中のコレステロールが原因で血管が詰まる「アテローム血栓性梗塞」、細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」、心筋梗塞や心房細動(不整脈の種類のひとつ)などにより心臓の中にできた血栓(血の塊)がはがれて脳の動脈に流れ起こる「心原性脳塞栓症」に分けられます。平成27年の厚生労働省の調査では、脳卒中のうち6割弱が脳梗塞であると報告されています[1]。
ラクナ梗塞の特徴は、細い血管であり障害される場所が限られているため、無症状が多いことです。現れる症状としては片麻痺や構音障害が主で、ほとんどの場合で意識障害などは伴いません。
アテローム血栓性梗塞と心原性脳塞栓症に多い症状として、運動麻痺(手や脚の動かしづらさ)があります。運動麻痺に伴い、歩行や寝返りといった動作が行いにくくなることが多くあります。加えて、構音障害といわれる呂律の回りにくさ、言語障害(失語)という、頭で思ったことが言葉にできないこと、人の話が理解できないといった症状が出現します。重症例では意識障害を伴うこともあります。脳幹や小脳という部位に障害が起こると、手足がふらついてうまく動かないことや、物が二つに見えることがあります。
さらに、脳梗塞の発症後1週間では、脳浮腫という梗塞している部位の周辺がむくみます。このむくみが周辺の脳を破壊しさらなる後遺症につながります。
脳出血の症状
脳出血は、高血圧や加齢により、もろくなった脳内の血管が破れることで発症します。
脳梗塞と同様に、運動麻痺、構音障害、言語障害、意識障害が主な症状となります。一般的に右側の脳で出血が起こると言語障害が生じやすくなります。脳梗塞と異なる症状として発症時に突然の頭痛、吐き気や嘔吐を伴うことが多くあります。また、出血部位により症状が異なり、被殻出血では、出血と反対側の手足の運動麻痺・感覚障害と同名性半盲という視野の半分が見えなくなる症状がみられます。視床出血では、被殻出血と症状は同じですが、感覚障害が強く現れることや、視床痛と呼ばれる激しい痛みを伴うことがあります。
くも膜下出血の症状
くも膜下出血の多くは、脳の周りの血管にできた動脈瘤というコブが破れることで発症します。血管がさけること(脳動脈解離)、血管の奇形(脳動静脈奇形)による出血があります。
最も代表的な症状に「突然の激しい頭痛」があります。「後頭部をバットで殴られたような」といった表現をされることもあります。加えて多くの場合、吐き気や嘔吐を伴います。初期症状などの前触れがないことも特徴です。
重症例では、意識が朦朧としたり、意識を失ったりといった意識障害がおこることも多く、全体の死亡率は50%以上といった報告もあります[2]。一方で、出血量が少ない軽症例では、軽い頭痛しか出現しない場合もあります。後遺症に関しては、脳梗塞や脳出血と比べ、運動麻痺などの症状を起こすことは少ないのが特徴です。
また、発症後にみられる、症状に脳血管攣縮と水頭症があります。脳血管攣縮とは、くも膜下腔内にある脳の血管が縮むことで、出血後2週間以内に起こります。血管が縮むことで新たな脳卒中を引き起こす危険性があります。水頭症とは出血後1?2ヶ月の期間を経て脳内に脳脊髄液という水が過剰にたまった状態であり、歩行障害、認知症、尿失禁が生じることが多くあります。
脳卒中の症状別治療法
脳梗塞の治療について
脳梗塞の主な治療としては、抗血小板薬や抗凝固薬といった血液をさらさらにする薬が使われます。また、t-PAと言う血栓を溶かす治療もあります。しかしながら、この方法は、脳梗塞の発症から4.5時間以内に行われる場合に有効であると言われています[3]。そのため脳梗塞が疑われる場合は、すぐに医療機関に行くことが重要です。
その他には、カテーテルという細い管を血管の中に通し、血栓を取り除くなどの治療法があります。また、脳梗塞後の脳浮腫を軽減させるために、抗脳浮腫薬が使用されます。しかしながら生存率に効果は認められているものの、運動麻痺といった機能に関する効果はまだ明らかになっていません[4]。
脳出血の治療について
軽度の脳出血では、降圧剤を用いて血圧を下げ、血圧の安定を図ります。出血量が多い場合や部位によっては手術を行い、脳内に広がった血液を取り除きます。
くも膜下出血の治療について
くも膜下出血の治療の目的は再出血の予防と全身状態の改善となります。
重症例では心肺蘇生など救命処置に加え、呼吸や血圧、心拍といった全身状態の安定を図ります。また、くも膜下出血の再出血は、発症24時間以内に発生することが多いため、脳動脈瘤内の血流を止める手術が行われます。
主な方法は、開頭し動脈瘤の付け根をクリップ(金属でできた洗濯ばさみのようなもの)で閉じてしまうクリッピング術と、大腿動脈(太ももの血管)から動脈瘤までカテーテルを入れて、コイル(細い針金のようなもの)を詰め込むコイル塞栓術とがあります。治療の選択は、脳動脈瘤の大きさ、部位、年齢などによって異なりますが、コイル塞栓術の方が、クリッピング術と比べ手術1年後の死亡数や障害発生数が少なかったという報告もあります[5]。
脳卒中の後遺症に対しては、運動障害とそれに伴う動作能力低下の回復を促進するために早期から、積極的にリハビリテーションを行うことが強く勧められています。特に訓練量や頻度を増やすことでより大きな効果が期待できます[6]。
まとめ
今回は脳卒中の種類と、それらの症状・治療法について紹介しました。脳卒中の治療には発症から数時間以内でないと行えない治療も存在します。今回紹介した症状が現れた場合は、早期に病院受診をすることが望ましいです。
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